***前書き***
  今も尚続いている放浪癖は、ここから始まりました。
  宇宙飛行士が初めて地球を見た時と同じ様な感覚を自分は得ました。
  自然の雄大さに比べ、何て自分の小ささ、愚かさ...
  でも、まだまだ未熟者です。
  旅の始まりは、ここから・・・




   
  オレはどこへ行くんだろう

平成4年8月13日 木 雨のち曇り

  「五日町のセブンイレプンまで行く、」
  『見送りに来ると、さみしくなるよ、』
  「なにか買ってあげるね、、」
  『ありがとう、、』
  「早く帰って来て、ね、」
  『・・・・・』

 PM0:30,いよいよ北海道へ旅立つ。スタンドでガソリンを満タンにして、まずは小出に向かい、Aベンチに寄ってコーヒーをもらう。
 『池田さん、行ってくるよ。じゃあね。』
 「クマに食われんなよ。」
小出インターから高速に乗る。変な天気である。GOOD-BYE!

 会社を辞めたのは生活を変えたかったからか?
 会社でも家でも、何も見つからない事にやっと気づいたからか?
 次の職などまったく考えていない。
 会社で仕事中に、ふと思いたった、
  『北海道に行ってみたいな。そうだ、北海道へ行こう。』
 今の自分にとっては極めて簡単な決断だった、なぜ?
 釣り具・キャンプ道具などを車に詰め込み1人で旅立つ。買ったばかりの地図帳が道案内だ。
 会杜を辞め、家を出て、彼女をおいて、どこまで? 何をしに? いつ帰って来るの?
 解らない、答えられない。何か希望と不安が入り交じっている中で、車は北へ向かって走り始めている。

 高速を降りてR7をプットバす。が、お盆なので渋滞にもまれ、PM7:30に酒田のGSで満タン。ここまで300km。もう暗くなったし、今夜はどこに泊まろうか? 地図帳君と相談してみる。
 PM9:30,秋田市をぬけ、大潟村のキャンプ場へ向かう。八郎潟にはすぐに着いたが、道が迷路の様になっていて、南池キャンプ場に着いたのがPM11:00。途中の雨も上がってきれいな月夜だ。
もう遅いのでカップメンと愛情オニギリで夕食を済ます。ここは村営のキャンプ場みたい。無料か?

 テントの中で最初の夜を楽しむ。ビール飲みながら。 明日も、たくさん走らなければ・・・。
    〜447km


8月14日 金 晴れ  大潟村南池キャンプ場〜
 期待と不安と疲れの一夜が明けた。コーヒーを沸かしてテントを仕舞う。今朝はメシぬき。
この八郎潟はブラックバスで有名なんで、ルアーをセットして釣りに行く。淡水の釣りならブラックバスからイトウまでのタックルを用意してある。でも水が悪い上に、ここは広すぎる。
 昼頃までやって、まったくペケ。あげくに雨まで降って来た。タックルを車に積んで出発。一路北へ。
米代川へと思ったが近場で藤琴川へ。青空の下PM11:00に藤琴川上流に入り、フライで流れを攻める。カディスを使ってヤマメを二匹(小)を仕留める。ま、こんなもんでしょう。
カップメンで食事を済ませ、PM6:00に出発。出発してみたものの、どこへ行こうか?

 PM7:00に十和田GSで満タン。何とか十和田湖までたどり着きキャンプ場を探す。生出キャンプ場へ行ったが非常に混んでる。湖岸にでもテントを張ろうかと暗く静かな道をウロウロしてたら、目の前にネオンピカピカの歓楽街が出て来た。観光温泉地って感じ。
 結局、滝の沢キャンプ場へ行く。同じ十和田湖のキャンプ場なのに、さっきの所よりもスイテた。また小雨がパラついてきやがった。
雨の中でテントを張り、オプショナルフライの中でご飯を炊き、スベアでラーメンを煮て、ヤキトリ缶とビールで夕食にする。ううウマイ!
  注:またラーメンか、と思うが、そのつど銘柄を替え、具を代え、味を変えております。
 おやすみなさい
    〜690km


8月15日 土 雨  十和田湖滝の沢キャンプ場〜
 AM10:00頃に目が覚め、コーヒーを沸かし、冷や飯に味噌汁をブチかけて朝食を済ます。
雨がシトシト降っている。テントを簡単にたたんで11:30出発。雨なので釣りはしない。R102から奥入瀬渓流へ。十和田湖から峠をぬけるまでの10km位か、ものすごい木々のトンネルが続く。とてもきれい、GOOD!

 R102〜R4〜R279 雨の下北半島へ。おみやげ屋で活ホタテを買って彼女の家などに送る。オレも食べたいヨ〜、買えばよかったなぁ。ここまで来れば北海道は目の前だ。地図を見ると今こんな所に居るのかって感じ。
  PM5:30,最北端の大間にトウチャク!  〜900km
PM8:40の函館行きフェリーがとれたので、近くのスーパーに買い出しに行く。その前にビールでカンパイ!時間は十分ある。カップメン(非常食であり消耗品でもある)・サラミ・ブタ肉・イカ刺しなどを買い込み、酒屋で氷とビールを・・・ナント!ハートランドの350缶があるぢゃないか!サスガ大間。店員に聞くと「そこにあるだけですョ」裏を見ると90”モデルだった。ヤッパリ大間。2年前とわかっていても4本全部買い占めた。
(ちなみに、フェリー乗り場にはHOTカンコーヒーがある。)

    PM8:40大間〜PM10:20函館 (北海道だ!)

 函館のGSで満タンにして、近くの大野町キャンプ場へ行く。北海道に入ったけど、別に変わりないみたい。
11:00にキャンプ場に着いた。山の上のまるでスキー場みたいな所だ。無料。
ものすごいキリの中で、とりあえずテントを張って夕食のしたく。
   *メニュー    ・イカさし
            ・ブタ肉みそ妙め
            ・ワンタンスープ
            ・炊き立てご飯
            ・ビール(ハートランド90”モデル)
 北海道の最初の夜に乾杯!
    〜932km


8月16日 日 くもりのちあめのちはれ  大野町キャンプ場〜
 コ一ヒーを飲みながら、冷や飯をチャーハンにしてトン汁で朝昼食。さらに、のりを買って来たのでオニギリを2個作る。中身はカツオ梅をダシ味噌で練ったもの。これはGOODでした。
PM11:00になってから出発。さ〜て、どこに行こうかな。

 何の変哲もない海岸沿いのR5から脇道のR277に入り、今金町方面の山の中へ。町から町の間は何も無い。途方もなく広い牧草地と果てし無く続く原野の道を走っていると、思い出した様にポツンと牧場があったりする。ガソリンスタンドもコンビニも無い。ちょっとスゴイが不安でもある。

 雨がやんだので、道沿いの遊楽部(ユーラップ)川でルアーをやってみる。すると、地元のオジサン(たぶん)が来て(牧場主かな?)、ルアー釣りを見たいと言う。どこからギャラリーが湧いてくるんだ?
川幅10m位の清流にルアーをキャスト。ピンスポットにビシバシ入る(決まった!)。
 「いやー、うまく投げるね。」  (ムフフ) 
何投かしてる内に“グッ”と流心で押さえ込む感じ。『やった、ヒットヒット!』 いいサイズの魚体が流れの中でモガイてる。しまった、ネットが無い。慎重に取り込むと30cmオーバーのアメマスだった。銀山湖のイワナみたいに白い斑点だけのキレイな魚体だ。北海道がオレを向かい入れてくれた気がした。ありがとう。
 オジサンは自分の事の様に大ヨロコビで「キミは上手だなー」。フックを外してリリースしようとすると、「何、放すのか?」とオジサン。「ちょっと待て、娘を呼んで来る。」と言って車に走って行った。初心者マークの車(クラウン)から娘さんが出て来て、これまた大ヨロコビ。2人の見てる前で、アメマスを川へ帰してやる。
 「何で持って帰らないの?」
 『また、ここに来た時に釣りたいから。』
その後、もう1匹かかったが足元でバラシ。たくさん魚が居る感じのユーラップ川だった。
オジサン、娘さん、ありがとう。

 今金町の山の中を行くあて無くさまよい、雨で増水した利別川でルアーを投げてみたりしてる内に、ゆっくりと陽が暮れてきた。R230この先には、オシャマンベに行かないとキャンプ場が無い。
途中の小さな酒屋で車を停めると、道のカンバンに“ピリカ自然公園”とか、“クワプラザピリカ入り口”'とか書いてある。自然公園って事は、キャンプ場が有るかもしれない。
・・・ラッキー、キャンプ場を見つけた。ピリカキャンプ場、まだ新しいキャンプ場で、トイレも炊事場もとてもキレイだ。さらに今一年は無料だって。
SP(スペシャル)スパゲティとビールで夕食。このエリアには数組しかキャンパーが居ない。キレイで静かなキャンプ場。場外のクワプラザピリカに行って温泉に入る。あぁぁぁいい湯だ。途中で野宿しなくてよかった。
    〜1075km


8月17日 月 くもりのちはれ 今金町ピリカキャンプ場〜
 ご飯を炊いて、SPカレーライス・トン汁・コーヒーで朝食。昼食用にオニギリ4個作る。今日は明るい曇り空。まだ生えそろってない芝生の上でくつろぎながら、地図帳君と話し合う。

 昼頃になってから、ピリカのカニカン岳の川にフライフィッシングに行く。水のキレイな川だ。
川に降りてからジンクリアーなプールに近づくと、流心で魚がライズしているのが見える。静かに静かにロングキャスト...ヤマメだ!
ヤマメが面白い様に釣れる。フライはマドラーテレストリアル。小型のヤマメだけれど次々と釣れる。こんな釣りは初めてだ。ヤマメに混じって25cm位のアメマスも釣れた。キレイな魚をキレイな川にリリース。

 隣りの沢のピリカベツ川へ行く。途中でキタキツネを発見!逃げるそぶりも無く向かって来る。ヌイグルミの方がカワイイなぁ。
車止めまで行って、今知り合ったばかりの長野のサイクリスト君(高校生)と、ここでキャンプする事にした。
 『夕飯のオカズを釣って来るから、楽しみに待ってろョ。』などと言って沢に降りる。
降りてビックリ、川幅1m位のV字の源流部だ。川をまたぎながらフライを振ってみる。すると、ポイントらしき所からは必ずヤマメが出て来る。小さな沢の出会いからは、何回もフライを追って30cm弱のヤマメも釣れた。大きめのヤマメを何匹かキープする。今夜はサイクリスト君に、ヤマメの刺し身とヤマメ汁とザルそば(ザルがないけど)をごちそうする。うぅぅウマイ!
そこへ東京のバックパッカー君が、デカイ荷物を背負って歩いて来た。
「温泉は、この先ですか?」 彼も誘って、ヤマメ料理とザルそばで盛り上がる。

 PM10:00頃か、バックパッカー君と20分ほど歩いて奥美利河温泉に行く。こっそりと露天風呂に入っていたつもりだが「うるさくて眠れネーゾ!」と、泊まり客に怒られた。スイマセン。
今日は、久々に人と話した感じ。話す相手が居るといいなと思った。
    PS:ここは蚊がものすごく多くて、体中さされる。


8月18日 火 くもりのちはれ  奥美利河温泉近くのP〜
 朝、テントから出ると、外に出してあったゴミ袋がメチャクチャになってる。キタキツネの仕業らしい。ヒデェー事しやがる! まずはゴミ拾い。
オレがご飯を炊いて、3人で朝食。コシヒカリのご飯がオコゲまでキレイに無くなった。よかったよかった。彼らは荷物の制限がある為に、簡単な食事で済ましているらしい。
サイクリスト君とはここでお別れ。いい夏休みになったかな、バイバイ!

 『どこかの駅まで送って行こうか?』
 「ア、ありがとうございます。そのつもりでした。」
と言うわけで、バック君をオシャマンベの駅まで乗せて行く。
 駅前に車を停め、久しぶりに町に来て、たくさんの人々を見る。
 『あのオネーチャンなんかどう?』
 「いや、その娘もすてがたい!」
一時の人間ウォッチングを楽しむ。彼は今日の夜行で帰るそうだ。バイバイ!
  PS:自転車で北海道旅行の高校生もスゴイが、30kgからの荷物を背負って北海道を歩くってのも、
     これまたスゴイ!どこかで、また逢いましょうネ。

 PM0:30出発。いい天気だ。久しく太陽を見てなかった。さて、今日はどこへ行こうかな。
R5はここより内陸部に入る。『オォーッ北海道!』って景色がどこまでも続く。広い牧草地、もっと広い原野、丘を越え、川を越え、町を越え・・・。

 ニセコの昆布川でフライでヤマメを釣り、羊蹄山を周り、ペーペナイ川でルアーでアメマス(30p強)をバラす。
6:30,尻別川を釣るつもりだったが濁って増水してたので、一路峠を越えて支笏湖へ向かう。
8:30,支笏湖の美笛キャンプ場に着いた。このキャンプ場に来るまでの道が凸凹で、全くもってヒドイ道だった。さらにキャンプ場は混んでる。適当な所にテントを張って夕食のしたく。
     *メニュー    ・スキヤキ
             ・ご飯
             ・コンソメスープ
 ビール飲みながら湖岸を散歩する。
 (ここのトイレはムチャクチャ臭い、注意が必要だ!!)
    〜1350km


8月19日 水 くもり  支笏湖美笛キャンプ場〜
 コンビーフチャーハンとトン汁で始まる。今日はいい事あるかな。
テントをたたんで車の中を片付けていると、「釣れましたか?」と声がする。札幌から来た青年だった。車の中の釣り具を見て立ち止まったらしい。この湖はニジとかブラウンのデカイのが釣れるらしい。それもドライフライで! 特に6月の頃にはセミのフライでガバガバ釣れるって言ってた。

 オレもフライを用意してからこの湖で釣り始める。透明度が本栖湖みたいに高く、大物が居そうな感じ。メイフライ・カディス・ホッバー・ウエット・ストリーマーetc、色々と試したけど、ライズも無いし、気配も無い。いくら北海道でも、真夏のまっ昼間の湖で釣れるかヨ!
 沢の流れ込みでやってる札幌の青年の方まで行くと、沖目で小魚の群れが盛んにライズしている。青年は#5タックルだが、こっちは#8なのでライズまでラクに届く。が、釣れない。20cm位のアメマスらしい。
 このポイントでもう一人のフライマンと出会う。やはり50cmオーバーのニジやブラウンが上がるそうだ。釣り人の話にしては真実味がある。この人が帰る時に、「この沢の付近は、ニジも多いがクマも多いから気を付けろよ!」って言われた。
 『ニジとクマと、どちらが確立が高いですかね?』と聞くと、
 「クマだなぁ」と一言。 ギャフン!
 美笛川の流れ込みに移動して、支笏湖フリークのオッサンと出会う。夏の昼間から何でこんなに釣り人が居るんだョ。
「この湖はナァ〜・・・」で始まって、60のブラウンがどうの、Gルーミスのオーダーメードのロッドがどうので盛り上がり(一人で)、ワカサギが居ない、栄養が少ない、夜がいいなどと、オッサンの話を聞きながら夕方になった。あっ、雨だ。移動しよう。

 タ張まで車をトバす。100km位あるかなぁ。支笏湖のモーラップキャンプ場で泊まろうかと思っていたが、雨が降ってたし、混んでいたのでやめた。地図帳君と相談したら、タ張のキャンプ場が目に付いただけの話。たかだか100kmか、な〜に、すぐそこジャン!
PM11:00,星空の下、夕張の丁来風致公園キャンプ場に着いた。公園には着いたものの、キャンプ場がどこにあるのかわからなくて苦労した。
 今日は疲れたので、カップメンとビールだけで寝る。
 あぁ〜疲れた、おやすみ。
    〜1492km


8月20日 木 くもり  夕張丁来風致キャンプ場〜
 ここは山の上のキャンプ場。一面芝生で小高い丘のゴルフ場みたい。キャンプ場の中をキタキツネが走って行く。ご飯を炊いて、トン汁と、のり佃煮で朝昼食。広くて人が少なくてキレイなキャンプ場だ。もうちょっと、のんびりして行こうかな。

 山を下りた途中でメロンを買い、新潟に何個か送る。高いよ〜オレも食べたいよ〜。
この夕張って所は、古い炭鉱の町がまだ生きている感じ。長屋の様なアパートが点々と有り、オオムラコンも、ユミカオルも居た。 一路、日高方面へ。

 台風10号のせいで川が荒れ、小さな沢もチョコレート色している。道路も通行止めの場所が多く、とても釣りどころではない。
PM6:30,明るい内に日高沙流川キャンプ場に着いた。300円也。
カンヅメをツツキながら、ビールで夕暮れを楽しむ。夕食はソバを半束茹でて食べたが、まだ入りそうだなぁ。
ビール飲みながら残りの半束茹でる。ゆったりとした時間が流れる・・・・・ヤッベ〜、ソバが茹で上がる前に、腹が一杯になっちまった。・・・う゛っ!
 超満腹の腹をかかえて沙流川温泉の日高高原荘へ行くと、PM8:00までだと言われてフロに入りそこねる。

  *注:ソバは一気に茹でて一気に食べましょう。
    2回に分けて食べると後々後悔します。ゲフッ。
    〜1645km


8月21日 金 晴れ 日高沙流川キャンプ場〜

 昨夜早く寝たので早く目が覚めた。とりあえずコーヒー。
スベア123Rが、ベッベッベッベッとパーコレーターを暖めていく。ゆっくりとパワーを立ち上げていくガソリンストーブの、こののんびりとした時間が大好きだ。炎は生きているんだ。
 飲みたい時に飲み、寝たい時に寝て、目が覚めるまで起きない。自然のおもむくままに...いい生活してるな〜。
ここは広くて芝生もキレイで居心地がいいキャンプ場だ。炊き立てのご飯(今日から“あきたこまち”)と、トン汁と、のり佃煮(きのうと同じか?)で朝食。
 早く起きたわりには出発がお昼。いつもの事だ。今日は天気がいいし、十勝の山奥にでも行ってみようか。

 R237から金山湖(かなやま)へ行くが、風が強くて釣りはほとんどしなかった(ここは、でかいイトウが居るらしい)。R38から新得町へ出る。GSで満タンにすると店員さんも釣り好きらしく、地元の情報を色々と教えてくれた。ベイトリールの使い方を説明しながら(オレが)、ここで底の剥げたウェーダーを修理してもらう。どうも、ありがとう。

 PM3:00,十勝川の上流へと向かう。GSから50〜60kmもある。広くて真っすぐな道を山奥へ山奥へと向かう。十勝ダム、いい湖だ。釣りをしたいけど、湖は道の遥か下で、V字のダム湖なので足場が全く無い。
先へ急ごう。道端でエゾジカを発見!カンゲキー! でも写真は撮れず、ザンネン。 これより先はジャリ道の林道。キツイ坂あり、急なカープあり、4〜5〜6km、おいおい、本当にこの先にキャンプ場が有るんだろうな?

 PM7:00,ド山の中のトムラウシキャンプ場に着いた。何組かのバイクのキャンパーしか居ない。車はオレだけ。ここは林を切り開いて、ブルトーザーで整地しただけって感じ。地面がまともに山土なので、テントのベグが途中で止まったりする。こういう所も、それなりに味があってよろしい。凸凹の上に何とかテントを張る。いつも芝生の上とは限らない。エアーマットを使ってて良かった。

 夕食の前に温泉に行く。東大雪荘は山小屋みたいで、玄関にたくさんの登山靴が脱いである。おもしろいダンナさん(ご主人?)と会話をし、チェックのシャツ着た山屋の人達を横目で見ながら風呂に行く。220円ナリ。ちょっとイオウ臭いけど、とってもいい温泉だった。
 静かに帰って来て(バイクの人達は夜が早い)から、SPラーメンとビールで夕食にする。

    ド山の中で、一人でラーメンすすりながら思う。
      『オレって、何してるんだろ...』
    〜1838km


8月22日 土 ハレ 十勝トムラウシキャンプ場〜
 AM9:00,バイクの音で目が覚める。テントから這い出すと、もう誰も居ない(バイクの人達は朝も早い)。コーヒーを飲みながら、今日はどこへ行こうか考える。

 山を隔てた隣沢のヌプントムラウシに行く。一旦林道を下ってから、また隣の林道(狭く凸凹)を10km位走る(登る?)。台風の影響で、沢沿いの道が寸断されてたりする。ナンノ、4WDだから何とかなるだろう。
 沢沿いの道を登って行くと、川岸に温泉を発見!と言っても、河原に穴が空いているだけの本当に露天風呂。
この近くでフライを振ると、すぐにオショロコマが釣れた。オショロコマは、北海道に棲んでる体に赤い宝石をちりばめた小型の美しいイワナ。小さかったけど、本当にきれい。

 山を下って然別湖へ行く。ここは禁漁区。湖の中を覗くと、たくさんの魚がいた(ザンネン)。 で、また山を越えて糠平湖に行くが、湖に降りる道を探している内に一周してしまった。や〜めた。また今度にしよう。
 R273を通って上士幌町のGSで満タン。R241で足寄町へ行き、Aコープで買い物をしてから阿寒湖へ向かう。

 阿寒湖への一本道を快調にブットバしてると、前方左50m/誰か居る。
 30m/タオルか何かを降ってる。
  5m/“阿寒湖方面”
   0m/ヒッチハイカーだ。 (ちょっと判断)ブレーキ。20m後方からそいつは走って来た。
  「阿寒湖に行きたいんですけど...」
  『いいよ、さぁ乗りナ。』
  「あの〜、自転車もあるんですけど...」
  『へ?!』
 てな訳で、後部の荷物の上に自転車を上げ、助手席を片付けて彼の席を作る。
「すいませんね、も〜走るの疲れちゃって。一時間位、あぁして居たんですよ。誰も乗せてくれなくって。」
当然だ!チャリンコ付きの男のヒッチハイカーを拾う様な、そんな物好きはいネ〜ョ!(オレは物好きだ)
 『ま、ビールでも飲めや。』
2人で阿寒湖へ向かう。彼は神戸の大学生で、ヨットで海で遭難して新聞沙汰になった事があるとか言ってた。たいしたヤツだ。さらに、北海道を周るのに履物をビーチサンダルしか持って来てないってのにも感心する。
 阿寒湖キャンプ場は、白棒に囲まれた広いキャンプ場だけど混んでた。2人でイカ刺し・肉鍋・炊き立てご飯とビールで乾杯! 北海道に入って、まだ3日だとか言ってた(オレの方が先輩だ)。北海道の話で盛り上がる。
オレのテントで2人で寝る。こいつもイビキがうるさい。
 明日も、いい天気になります様に   おやすみ。
    〜2096km


8月23日 日 はれ  阿寒湖畔キャンプ場〜
 AM8:30,『おはよう、いい天気だなぁオイ。』コーヒー飲みながら朝食の支度をする(2人分)。 この青空の下、ファミリーキャンパー達は朝から慌ただしく活動している。
 タンクトップにウインドゥプレーカー、ニッカポッカとビーチサンダルのかっこうの彼は、足のポケットからチャッカマンを抜き出し、眠い目をこすりながらタバコに火を着ける。「ホント今日はいい天気ッスね〜。」
 ご飯とトン汁とハンバーグ。オレがいつもの様に食べている、サラミと生タマネギを入れたインスタントのトン汁を喜んで食べてくれた。「これは、イケますョ」
彼は知床方面へ行くそうだ。2〜3日したらオレも知床に行く。知床で会おうな。また、このトン汁を食べさしてやるよ。じゃぁ〜ネ、気を付けて行けよ!

 阿寒湖をちょっと下って、阿寒川でフライを振る。山の原生林の中をゆっくりと力強く流れている川は、中に木が倒れるがままになり、岸には巨大なフキが行く手を阻む。川を隠すかの様に木々が枝を伸ばし、フライのバックスペースもままならない。スバラシイ!
 すぐに小型のニジがヒット、ジャンプ、ジャンプ!これはスゴイ! バックスペースを気にしながら少しずつ釣り上がり2匹目がアタック。もう1匹釣ったらやめようかな。
 マドラーテレストリアルがゆったりとした流れに乗る。「ガポッ!」ムッ!今度はデカイか?ジャンプ、ジャンプ、さらにツッ走る。もう最高な気分!!
 車に戻ると漁協のオッチャンが待っていたので、『この川はスバラシイ!』などと誉めて誉めて誉めちぎる。が、遊漁料を取られる(当然か)。ウェーダーの底がまた剥げたので釣り具店を聞くが、この辺には無いと言われて釧路の店を紹介してもらう。60〜70km位かな。たかが釣り具店に行くにしてもスケールが違うゾ。

 釧路市は久々にデカイ町だ。建物がコンクリートで出来ていて、信号がたくさんあるし、キツネがウロウロしていない。ここのデカイ釣り具店でウェーダーとルアーを買い、町の居心地が悪いので、とっとと町を出る。さ〜て、もうタ方だし、今夜はどこに泊まろうかな。
食料を買い込んで鶴居村のキャンプ場へ行く。小さな川のほとりの小さなキャンプ場だ。バイクのキャンパーが1人居るだけ。後から夫婦のバイクキャンパーが来た。王子を6個買って来たので1個ずつおすそわけすると、3人とも喜んでくれた。今夜はスパゲティーと目玉焼きとビール。人が少ないので静かなキャンプ場だ。昨日と大違い。かすかに聞こえる川の音を聞きながら寝る。
 みなさん、おやすみ...
    〜2266km


   ***番外!北海道中間報告***
@町から町へ10km以上 (途中何もない)
@町以外は牧場か原野 (本当に何もない)
@魚がたくさん、いっぱい居る (オレにも釣れる)
@アメマスを旨くないと言って外道扱いする (じゃぁ、持って帰るなよ!)
@キタキツネがたくさん居る (どこに行っても居る)
@ヒグマがたくさん居る...らしい (らしい)
@バイカー&チャリンカーが多い (夏だけだと思う)
@バイク&チャリンコのキャンパーは、夜早く朝も早い (そんなに急ぐなよ)
@キャンプ場がたくさんある (どこにでもある)
@自然がいっぱいある (それ以外ない?)
@町〜町の道は直線が多く、速度無制限 (アウトバーン、動物に注意!)
@どこへ行っても笹ばかりある (エゾパンダは居ないのか?)
@夏なのに海水浴してる人が居ない (流氷がまだあるのかなぁ)

!!!さらに!!!
@夏はAM3:00に陽が昇り、PM9:00に陽が沈む!
@海岸沿いの道では毛ガニが横断する!
@コンビニではヒグマ避けでト○レ○が買える!
@タクシー乗り場にはスノーモービルのマークがある!
@ホンダのカブにはスノータイヤが標準装備されている!
...などなど、(^^;



8月24日 月 一日中晴れ  鶴居村キャンプ場〜

 AM8:30,暑い! コーヒー飲みながら、ご飯を炊く。珍しく日陰に入りたい位に暑い。生玉子で玉子ご飯とトン汁。キャンプ場の水道で頭を洗い、ついでに泥だらけの車も洗う。(鶴居村さん、スイマセン。その代わりにゴミ拾いしました)

 PM0:30スタート。何時に起きてもこの時間だ。釧路湿原(たんなる広い原野)を見てから、コッタロ湿原のあたりの釧路川で釣りをする。チョコレート色してトロンとした川。イトウを夢見てルアーを投げるが、夏の真昼間から釣れる訳がない。
この何日か続いた晴天のおかげで、未舗装の道は乾ききっている。対向車とすれ違うと、その後ろから濃厚な土煙が襲って来て、今朝洗ったばかりの車がまた白くなっちまった(オレのもクラエ!)。

 R391で屈斜路湖方面へ。弟子屈より上流の釧路川に入る。ここまで来ると水がとてもキレイで大物が居そう。フライを振るとすぐにヒット!ドライで釣れたのに底へ底へとグングン引く。イワナ系の引きか?足元まで寄せて見ると30p位のウグイ。その後、ルアーで攻めるがヒットなし。
上流からカヌーがゆっくりと流れて来る。竿を上げて手を振って、のんびりと見送ってやる。

 PM6:00頃に屈斜路湖に入るが、どこに行こうか迷った後に砂湯キャンプ場へ行く。湖岸の広いキャンプ場だけどチョット混んでいる。さらに車の乗り入れ禁止なので、しかたなく道路に停めた車の近くにテントを張る。
この砂湯って所は、湖岸の砂を掘ると温泉が湧いちゃう。で、キャンプ場の湖岸は穴だらけ、露天風呂だらけ。
 隣のファミリーからカレーの匂いがする(定番です)。向こうのキャンパーが焼き肉を始めた(やはり定番です。でも、せっかくの炭火の上に鉄板を上げるのはヤメテくれ〜っ!)。
さて、オレは何を食べようかな。あっ、今朝作ったオニギリが2個あったんだ。大丈夫かなぁ?(セーフセーフ)と言う訳で、一歩手前のオニギリをパクツキながらラーメンをススる事にする(これも定番です)。
 水場に食器を洗いに行くと、何と、ここの水道水は生ぬるい。いや、暖かい。地面のすぐ下が温泉だから当然だよな。テントの下に玉子でも埋めて置けば、朝には温泉玉子が出来ているんじゃないかな。
〜2440km


8月25日 火 快晴  屈斜路湖砂湯キャンプ場〜
 AM9:30,テントの中が暑い。最高の青空の下、ご飯を炊きながらコーヒーを飲みつつ、今日の予定と今朝のオカズを考える。
予定は無し。オカズはSPカレーを作る。タマネギの微塵切りとコンビーフを妙め、ガーリック・七味唐辛子・ブラックペッパー・タバスコなどを入れ、レトルトのカレーをブチ込んで煮る。たとえ朝でもノーマルでは済まさない。簡単なインスタント食品に手をかけてSP(スペシャル)化する事にこだわりがある。この激辛カレーを平らげたら、とりあえず移動しよう。
 『あ゛〜暑い!』

 弟子屈から中標津・標津を抜け、知床半島へと向かう。青空と広大な大地との境目を目指して、車は広い道路をひたすら走る。標津から海岸沿いを走ると、海の向こうに北方領土が見える。何だ、すぐそこじゃん。意外と近いのにオドロク。こんな隣島の事で、何をゴタゴタ言ってるんだョ。くだらネェ所にダムや護岸工事する金が有るんなら、ロシアの政治家にでもワイロを握らせて、あの島を買えばいいのに。
 羅臼でウロウロするが、トドが居る訳でもないし、まだまだ時間があるので、知床峠を越えてウトロ側に移動する。大自然のド真ん中に、よくもまぁこんな道を作ったもんだ。当時の測量班は、何人かヒグマに襲われて行方不明になったに違いない。

 PM5:30,知床峠を下って目の前のオホーツク海を見ると、幌別川河口に釣り人が沢山居るのが見える。さてはサケの密猟者だな。サスガ北海道!こんな事もあろうかと、サケ用のルアータックルを片手にオレも河口に降りる。釣り上げられている魚を見ると『えっ、サクラマス?』と思わせる様なメスと、やや鼻曲がりで背中が盛り上がっているオスが転がっていた。これは、もしかしてピンクサーモン(カラフトマス)か?へ〜、居るんだ。オレも釣るゾー!
 ライムグリーンのジャケットを着たバイカーらしき若者(オレの車の隣のカワサキかな?)に話しかけると、ちょっと興奮ぎみに「イヤー、竿を折られちゃって、さっき釣り具店に行ってこの竿を買って来たんですよ。」てな事を言ってる。おいおい、そんなにスゴイんかよ!
タプルのロッドにABU5000C、その先にはピクシーを付ける。藻が有るのか浅いのか、たまに根がかりするのでロッドを立ててリールを巻く。ちょっと雨がパラついて来たが気にしない。ピンクサーモン、ピンクサーモン!
 頭の中でルアーの動きをイメージしながら、ゆっくりとゆっくりとリールを巻いていると、“ガッ!”と、柔らかいが力強いアタリがあった。『ヒット!』何回も何回もフックさせる。やった、ものすごい引きだ。おおっ、5000Cのドラッグがまともに鳴いてる。『スッゲェーッ!!』 右に左に沖に走られながらも足元に寄せる。初めて釣ったピンクサーモンが、今、オレの足元に居るんだ。『ヤッター、ブラボー、ハラショー、サイコー!』

 50cmオーバーの、やや鼻曲がりのオス。写真を写して、ルアーのフックを外してリリース、のつもりだが、かなり弱ってしまって、なかなか泳ぎ出してくれない。最初の1匹だからと思い、キープする事にする。気が付くと、かなり雨が降っていた。





 ウトロのキャンプ場近くのスーパーに買い物に入ると、先程まで一緒に釣りをしてたカワサキのバイカーが居た。『あの後で、やっと1匹釣ったよ。あ、そこのキャンプ場に居るの、オレもこれから行くつもりだから、このピンクで一杯やろうや。』
小雨の中、カワサキバイカーと一緒にウトロキャンプ場へなだれ込む。
この辺にはここしかキャンプ場が無いので随分と混んでる。さっさとテントを張ってから(お〜、オレと同じムーンライトVだ)、炊事場に行って2人で今日の獲物にカンパイ! 他のキャンバー達はもう夕食が済んだみたいで、この炊事場は貸し切り状態。ラッキー!
 ご飯を炊きながらピンクサーモンをさばく。いがいと簡単に3枚におろせた。オイオイ、いちいち分解写真を撮るなョ。アラと白子を鍋に入れ、アラの味噌汁を作りながら再度カンパイ!
 通りがかりの大阪のチャリンカーを引き込んで一杯やる。
 『よーし、刺し身が出来たゾ。』
 「こりゃぁスゴイ!」
 「ウマソーッ!」
 『写真を撮るなよ写真を。』
もーバカウマ、最高に旨い! 小雨の中、炊事場は遅くまで盛り上がる。
(ちなみに、アラの味噌汁は鍋ごと全部こぼしてしまった。 ま、いいか。)
 *初めて釣ったピンクサーモンはスーパーファイターで美しく、とても感激した。
   たとえ北海道とはいえ、たかだか旅行者にもこんなのが釣れるってのはスゴイ!(ウデがいいのか?)
〜2660km          ( ・・・腹が痛い)


8月26日 水 朝雨のち曇りのち晴れ  ウトロキャンプ場〜
 AM8:00,雨。あぁ、ゆううつ。本を読みながらゴロゴロしてる。今日はあまり動きたくない。外は雨だし、何か体調が良くないし。
9:00そろそろコーヒーでも飲みたい。シェラフに包まりながら前室をまさぐってパーコレーターをセットする。寝ながらスベアをプレヒートし、寝ながらコーヒーを沸かし、寝ながらコーヒーをすする。
 10:00,雨の音がやみ、テントの外が明るい。たまには一日中ゴロゴロしていようかな。またピンクサーモン釣りにも行きたいし...。とりあえずカップメンでもススろう。

 11:00,幌別川河口に来た。今日もカワサキバイカーがガンバッている。
 『どう?』
 「ダメですねー」
沖でピンクサーモンがハネているのが見える。昨日の1匹で満足しちゃって何か集中できない。ルアーを換え、時々ゴロンと横になりながら、この場の空気を楽しむ。エサ師・ルアー師・フライ師、みなさんガンバッてください。
 『ムムッ!』 根がかりか、ヒットか、とりあえずアワセる。ヒットだ!『ぬお〜っ!!』スゴイ引きだ。
横っ飛びにピンクサーモンがジャンプした。『スッゲー!』全く寄って来ない。これはデカイぞ。まさか、スレじゃないだろうな。隣の釣り人が邪魔くさそうに竿を上げている間、存分にファイトを楽しむ。
岸に上げずにオレの方から海に入ると、ギンギンに輝いた60pオーバーのピンクサーモンのメスが居た。背中と尾ヒレの斑点を見なければ、まるでサクラマスの様だ。 早めに口に刺さったピクシーを外してリリース。
 『サンキュー、ジャァネ!』ヤッタ、すばらしい、最高!


 海岸でフライを2個拾った。たぶんバックキャストで引っかけたのだろう。オレンジのゾンカーと赤のマラブー、これでフライを振れる。赤系のストリーマーを持ってなかったので、これは助かった。ありがとうどこかのフライマン。
川の流れ出しの岩の上で釣ってるフライマンは、たぶん#5〜6位のタックルだろうか。ロッドをバットから満月にしならせて、周りからヒンシュクをかいながら何匹も釣っている。おもしろそう。
 #8のフライタックルをセットしてから再度アタック。この頃になると誰も釣れなくなってしまった。潮のせいなのかオレの方も全くダメ。さあどうする。もうタ方だし、人々はそろそろ帰り始めている。なぁに、明日があるさ。

 今日は河口近くのパーキングで車の中で寝る。混んでるキャンプ場には行きたくないし、今一つガッツが無い。う一ん、う一ん...

  (・・・やっぱり腹が痛い、熱っぽい、寒い、カゼかな、それともアニサキスかなあ。何でもいいから薬を飲んで寝よう。)


8月27日 木 晴れ  幌別川河口近くのP〜
 AM7:00,釣りに行く。まったく、さっぱり、ぜんぜんダメ。
11:00,海から上がって山の中に入る。知床半島のジャリ道を突き進むと良さそうな川に着いた。たぶんイダシュベツ川かな。フライをセットして川に降りると、水が信じられない位に冷たい。まるで雪解け水の様だ。
ドライヘの反応が鈍いけれども、きれいなオショロコマを何匹か釣った。リリースする時に川に手を入れると、この冷たさが良くわかる。
 『大きくなれよ。』
昨日はピンクサーモン、今日はオショロコマ。大きさは違っても、釣った時のうれしさは同じ様な気がする。

 天気がいいし、まだまだ時間があるので、知床峠を越えて羅臼に行く。羅臼側にはピンクサーモンの釣り人が居ないみたい。海岸沿いの道を知床の奥へ奥へと走るが、最端までは道が無くて行けなかった。相泊の道の終点でU夕一ンすると、そこには“熊の穴”という食堂があった。
 体調がすぐれず、ここ数食まともに食べていないが、それほど腹もへってない。ゴハンを作る気力が無いって感じ。でも、知床の行き止まりの食堂に入るのもイイかもしれない。初めての外食だ。中に入る。
 トド料理とか熊料理とか書いてある。サスガ知床だぜ。中に“熊ラーメン”ってのがあった。熊が丸ごと一頭入っている事を期待してこれを注文した。
「おまちどうさま、熊ラーメンです。」主人が軽々とドンブリを持って来ると、ラーメンには茶黒いチャーシューが1枚乗っていた。壁に書かれた説明には“裏山で取れた熊のチャーシュー入り”と書いてある。これが熊チャーシューか。大きさに迫力が無いけどウマイ。ラーメンもウマイ。今まで毎日が自分の味だったので異様に旨く感じる。何て〜か、ダシの旨みの様な、化学調味料の旨みの様な...。

 腹ごしらえも終わり、羅臼から再びウトロヘ移動する。目的はピンクサーモンをフライで釣る事。ルアーでは楽しんだのに、フライでのヒットがまだない。幌別川河口はまだ釣り人で賑わっていた。エサ師・ルアー師・フライ師、みなさんガンバッてますね。オレもフライタックルをセットして戦線に加わる。
 程よい場所を確保してから大きく深呼吸。黄色い#8のフローティングラインがゆったりと赤いフライを運び、フライが12ftのリーダー分だけジワジワと沈んで行く。海中に漂わせる程度にリトリーブし、潮に流されて隣の人のエリアに行く頃にピックアップする。波間に漂っている黄色いラインをゆっくりとリトリーブしていると、波の動きに反して“ツツッ”っと数cm引き込まれた気がした。『これか!』 ロッドを立てると、いきなり“ドンッ!”とロッドに衝撃が走り、左手のラインが一気に引き出されて行く。『ヤッタ、取った!』と思う間もなくラインがたるむ。『しまった、手前に走られたか?』全速でラインを回収するが、フライが波間に見えた時点で敗北が決定した。
 『ムムム...オシイ、クソー、ガッデム!』
またパーキングで車の中に泊まる。夕食の中華ドンを作りながら思う。
 『明日こそは絶対、きっと、たぶん...』

   (・・・まだ腹が痛い)


8月28日 金 ハレ  幌別川河口近くのP〜
 AM7:00出撃。フライでやるけど、まったくダメ。数日前から顔見知りのオッサン(釣りも潜りもする)に聞いたが、ここの釣り人はみんな密猟者だと思っていたが(オレも)、この周辺は釣っても良いそうだ。北海道って太っ腹だな〜。
 海から上がって、ご飯とカップメンで朝食にする。ここでの釣りはもうやめた。クソルアー野郎に腹が立つ。スレで釣れるのは仕方ないけど、多くの人がルアーを使って“ヒッカケ”を狙っている。カッコいい服装で、ブランド物のロッドとリールを使って、ルアーを付けて、ハイスピードリーリングをし、ロッドを思いっきりシャクってる。ルアーの使い方を知らないのかタコ!恥を知れ恥を!そこまで落ちぶれてまでルアーでピンクサーモンを釣りたいのか?正当なヒッカケ針を使ってバンバン釣ってるオヤヂが紳士に見える。そんな連中の中で釣りをするのがイヤになってきた。ヘタクソヤロウ!

 AM11:00,網走方面へ移動。今日も快晴ナリ。
北海道って、車で走っているだけでも最高にハイになれる。何て言うのかな、頭の中に何も無いって感じ。大自然と真っすぐな道、心地よい風、スバラシイ!同じ日本なのだろうか。網走の道で“あなどるな カニも出てくる いなか道”ってカンバンが有った。スバラシイ!

 R39から大雪湖をぬけて層雲峡に入る。北海道で初めて見る大岩山。中国の墨絵みたいな景色で、切り立った岩山がずっと続いている。層雲峡から愛別町まで来ると、あたりはもう薄暗くなっていた。これからどこへ行こうか、どこに泊まろうか。車内灯の下で地図帳君とニラメッコする。
 行き先も決まらない内にスーパーに寄って食料品を買い物すると、この店で“ホンコンヤキソバ”を見つけた。これは小学生以来だ。まだ有ったんだ。これは懐かしく嬉しいぞ。岩尾内湖のキャンプ場に行く事にして出発。途中の協和温泉に寄る。久々に風呂に入った。やっぱ温泉だよね。
 山の峠に差しかかると、いきなりジャリ道になった。峠道と言うよりは林道。車のライトに照らされてキツネやタヌキが浮かび上がる。岩尾内湖はまだか。もう随分走ってるぞ。ちょっと不安になったりする。
 PM9:00,やっと岩尾内湖キャンプ場にたどり着いた。ここもキャンパーが少ないな。走り疲れたので、ビール飲んでさっさと寝る。
  *今日見た動物  ・カモメ(ウミネコ?)
              ・カラス
              ・キタキツネ
              ・エゾネコ(たぶん)
              ・エゾタヌキ(たぶん)
              ・エゾネズミ(たぶん)etc
    〜3221km


8月29日 土 今日も晴れ  岩尾内湖キャンプ場〜
 AM9:30,白樺に囲まれたキレイなキャンプ場。湖岸の方まで散歩に行く。 今日もいい天気だ。コーヒー飲みながら、“ホンコンヤキソバ”を作る。懐かしい味だ(べつにウマイわけではない)。

 早めに移動と思ったが、キャンプ場の下でルアーをやっている人が居たので、オレも支度をして釣りに行く。ダムが減水している為に赤土の斜面がむきだしになり足場が悪い。ダム湖はどこでもこんなものだ。釣りをしたそうに見ていたバイクの青年に、スピニングタックルを一式貸してあげる。不憤れなタックルだが、指導の甲斐あって小型ながらアメマスとサクラマスなどを釣って大ヨロコビ。オレの方はたいした釣果無し。

 PM2:00頃に移動。士別をぬけて朱鞠内湖へ。ルアーをしたいが、湖が広くてポイントがつかめない。流れ込みに行こう。と思って車で走り始めたら、また変な林道に迷い込む。まともな道に合流し、流れ込み付近を見ると何か湿原みたいな所だ。この湖は島がいくつも有り、浅いのか深いのか判らないし、周りの景色と溶け込んで異様に神秘的な感じがする。
 釣りもしないで湖を一周すると、夕陽が島を湖をオレンジに染めていく。よくテレビで見る様な、アラスカあたりの風景みたいだ。この奇麗な湖の中には、でかいイトウ・ニジマス・アメマス・サクラマスが居るに違いない。たとえ釣れなくても、このロケーションの中で竿を振れればいい。明日は朝から釣りに行こう。早く起きられればの話だが...。
 キャンプ場に行くと、数時間前よりも随分とテントが張ってある。なるほど、今日は土曜日か。一般人の週末を邪魔しちゃぁ悪いので、端っこの人気の無さそうな所にテントを張る。水場がちょっと遠いけど、まぁいいか。ここのキャンプ場は第1.2.3とあって、第2に入った。林の中のテントサイトだけあって、地面には木の根が至る所に足を広げ、ペグを打つのもままならなかった。

 今夜は何を食べようかと車の中を探っていると、4日ほど前に買ってすっかり忘れていたパック詰めの味付け焼き肉(生)が出て来た。≪要冷蔵≫そんな事は百も承知だ、もう遅い。買った時はガンガンに凍ってたんだけどな。ま、真空パックは破れてないし、腹が痛いのもすっかり治った事だし、ご飯は炊けたかなと。
 良〜く焼いて食べる。もしも変な臭いやネバリ気があったら捨てるけど、ちょっと酸味があるだけなので(最初からの味かも知れん)、タレにタバスコとニンニクを入れてゴマカス事にする。オレって冒険してるよな〜。
    〜3350km


8月30日 日 くもり  朱鞠内湖キャンプ場〜
 AM9:00,今朝も釣欲よりも睡眠欲の方が勝ってしまった。とりあえず、コーヒー飲みながらチャーハンを作る。よし、朝飯食ったら釣りに行こう。
 キャンプ場の下で釣り始める。ここも赤土の大地の湖だ。ルアーをカウントダウンすると意外に浅いのがわかる。場所が悪かった。浅場は時間・水温などの影響を受けやすく、当たり外れが多い。朝一番ならばニジとかサクラの回遊があったかもしれない。(これは典型的な釣り人の言い訳です。全国共通)

 AM11:00移動。R275でさらに北へ向かって走り、オホーツク海側に出る。民家も車も少ない様な気がする。
PM3:00,名前だけは知っている猿払川に入る。上流部?思ったより小さな川だ。川幅は10m以下で、水の色は薄いコーヒーブラウン(澄みきっている)、流れはトロンとして、中に木がたくさん沈んでいる。ここにはイトウが居るハズ。ルアータックルを持って、川に入ってすぐに何かがヒット!『イトウか?』まさかそんな訳はなく、足元には30cm以上のウグイが上がって来た。デカイ!
 川幅が狭く後ろがヤブでルアーを投げにくい。流れを下りながら小技を使い、ダウンストリームでルアーを止めてみたりしてる内に、ビーバーダムの様なプールに出会う。これ以上近付けないし、プールの中は流木で一杯だ。どうしようかと思い、ジッターバグを付けて下流のプールにキャスト。あまり動かさずに水面でモガかせる。何投目だろうか、何物かがジッターバグにアタック!間髪入れずに合わせると、ジッターバグがオレ目掛けてブッ飛んで来た。ハズレ、おもいっきりのカラ振りで終わった。
何物だったんだろう。猿払川を後にしながら、頭の中でさっきの波紋が大物に変わって行く。

 海岸沿いの道を宗谷岬目指して走らせる。ここまで来ると最北端はもう20〜30km先だ。右は相変わらず海だが、左に山が無い。小高い笹ばかりの丘が遥か向こうまで延々と続き、夕陽がゆっくりと丘を赤く染めて行く。変な景色がキレイな絵に変わっていく。今、オレは北に居るんだ。


 PM6:00,夕暮れの宗谷岬に着いた。ここが北の端っこか。別にどって事ないが、例によって土産物屋が賑やかに立ち並び、われ最北端と歌っている。最北端オブジェの前でヒッチハイカー君を拾い、稚内駅まで送って行く。話を聞くと、この青年は柏崎の人だった。こんな北の果ての車の中で新潟弁が飛び交う。

 色々と走り回ったけどキャンプ場が見つからず、ノシャップ岬の先端に車を止めた。ここは準最北端の岬。2番目だと人気が無く、あたりは静まり反っている。
 疲れた、今夜は車の中で泊まる。ここが折り返し地点か?という事は、明日からは帰路になるのか?いや、そんな事は無い。そもそも予定なんて何も無いんだから。 さ〜て、明日はどこに行こうかな。
    〜3660km


8月31日 月 はれ  ノシャップ岬先端〜
 AM8:30,ハラヘッタ!今日もいい天気だ、などと言いつつ北の風をツマミに空っ腹をなだめる。昨夜は静まり返っていたのに、周りは漁師がお仕事をしている。オジャマみたいだし、キャンプ場でないので落ち着かない。そそくさと移動する。ノシャップのコンビニで朝食を買い、今日は特に行くアテも無いので、コインランドリーを陣取って洗濯と朝食にする。さて今日は、今日は、今日は...

 宗谷岬をぬけ猿払をぬけ、左に海、右に笹の丘を見ながら海岸沿いを車は走る。この道は長いだけで色気が無く、いまいち退屈してしまう。紋別からR273で山側に入ると景色が変わった。オレは海タイプではなく、やはり山タイプの様だ。海辺よりも山の中を走っている方が気分が落ち着くし、何かを期待してワクワクする。何を期待してるんだろう。

 渚滑川の上流部でフライを振る。川に入るとメチャクチャ冷たい。でもオレはドライフライの人だからドライでやる。20〜30m釣り上るが、まったく反応無し。何としてでも釣ってやる。でも、100mほど探ったがオショロコマが何匹か顔を出しただけで終わった。今日もたいした事をしない内に一日が終わりそうだ。この道の先にキャンプ場が有り、地図帳には“ウキウキランド”と書いてある。よし、今夜の宿はここだ。

 山頂のトンネルのたもとにキャンプ場は有った。『こ、これがウキウキランドか?』スゴイ、凄すぎる。人っ子一人居ないトンネル脇の空き地ぢゃないか。でもよく見ると芝生だし、バンガローが一つ二つ有る。キャンプ場を貸し切りってのも悪くない。・・・ランドね〜、ウキウキするな〜。

 毎日が充実している。不安な程に充実している。何の束縛も無く、ノルマも無く、予定も無い。自分の事は自分で決める。これは当然の事なんだ。自由って何だろう。オレは今自由だ、これが自由なんだ。そう思っている。それとも単なるプータローの旅行なのだろうか?
オレにとっての自由なんてこれで十分なんだ。自分の時間の選択権を自分で持っている事に気付き、これを行使できる。多くの人達はこれに気付いていない。自己主張も出来ない連中は、世間の尻に付いて行って溜め息を漏らす事に時間を費やしている。でも、それもその人が選んだ自由なのかもしれない。翼は飾り物ではなく飛ぶ物なんだ。どこへ行くかは、その人の、自由。
 たった一人で居ると、コールマンのランタンの音が頼もしく感じる。白く燃えているマントルをじっと見ていると、中に吸い込まれて行く。
 小さな小さな女の子が話しかけて来る。
  「どこに行くの?」
  『・・・明日へ、』

 降る様な星空を見ながらビールを一杯。夜が随分と寒くなってきた。暖かい服を着込んで、ゆっくりとタ食を作る。今夜はいつもより手間をかけて牛丼にする。 明日もいい天気になりそうだ。
    〜3972km


9月1日 火 晴れ  ウキウキランドキャンプ場〜

 夜中に物凄い大雨が降ったが、今朝はカラッと晴れわたり最高の青空。
朝食前にキャンプ場の奥を流れる小さな沢に釣りに行く。北海道って所は、水が流れていれば何か魚が居るはずだ。ヤマメ、さもなくばオショロコマ、あわよくばニジマス。沢が小さくて、#5のフライタックルが大袈裟に見えてしまう。 やはりオショロコマが居てくれた。小さな奇麗な可愛いオショロコマが数匹。
 十分満足してキャンプ場に戻る。雨の後なのに空気は乾き、空は青く澄んでいてとても気持ちがいい朝だ。さ〜て、飯でも食って活動するか。

 AM11:00出発。R333で北見方面へ。湧別川で釣りをしたかったが濁っている。途中で脇道に外れ、武利川の上流に走るとダムが有った。ここも濁ってるけど釣りがしたい。青い空が「ルアーで攻めなさい」って言っている。よし、やってみるか。
 岸辺にルアーのパッケージが落ちている。クソヤローが捨てて行ったに違いない。魚達よ、ゴミを捨てて行く様な連中の針には掛かるなよ、良い子のオレの針に掛かりなさい。濁りで解らなかったが、ここは随分と浅い。土砂で埋まってる様だ。水が澄んでいたら、たぶん釣りをしなかっただろう。たまにヤマメっ子が足元まで追って来るが、早々に竿をしまう。もっとコンディションのいい所で釣りをしたい。

 移動しながら適当な川を見つけては覗いて見るが、濁っている川をうらめしそうに眺めては引き返す。北見の常呂川なども見たが、やはりこの辺もダメだ。
こうやってウロウロしていると、簡単に時間が過ぎてしまう。また今日も貴重な一日が終わってしまいそうだ。今夜の宿はまだ決めていない。ま、とりあえず走りながら探そうか。

 もうすっかり陽が暮れてしまった。走り疲れて、早くどこかのキャンプ場に転がり込みたい。この先の網走方面には、キャンプ場がたくさん有る。適当な所で網走の女満別キャンプ場に入る。
ひっそりと静まり反ったキャンプ場には、テントが数張りあるのみ。もうシーズンオフなんだ。濃い霧に包まれながら、寒さしのぎにラムを一口。
 静かなキャンプ場は好きだよ。はしゃぎ廻るガキは居ないし、うるさい酔っ払いも居ないし、オレが何を作っているか覗き込む様にテントの横を通るヤツも居ない。ここ数日、帰るって事を意識してる様だ。ずっと北海道に居るわけでもないし、いつかは帰らなければならないのかもしれない。帰りたくない...。ここに居れば何も考えなくてもいいし、毎日が気楽で楽しい。何が不満なんだ?予定も無ければ不満も無いはずだ。でも、ガラアキのキャンプ場と、日に日に寒くなってくる夜が何かを語りかけてくる。今ここにこうして居られるのも感謝しなくてはならない。もう二度とこんな生活は出来ないのかもしれないのだから。
スベア123Rを空焚きしながら、以前に住んでた世界を思い出す。少しはオレ、進歩したかな?

 疲れ果てた 体よこたえ 目を閉じて 今日を思いかえす
  汗にまみれて ただがむしゃらで 夢はまた遠い 1日だった
 だけど明日は きっといいこと あると信じてたいの Maybe Tomorrow

     夜にすいこまれ 心がさむくなる 子供の頃を 想いだすよ
      ひとりぼっちで 歩きはじめたから もうふり返ることはできないね
     灰色の日に 行きづまっても あきらめは出来ないの Maybe Tomorrow

                                (REBECCA / Maybe Tomorrowより) 

ちょっと雨がパラついてきた、今夜も寒くなりそうだ。
もう一口だけラムをあおって寝ようか。シェラフの中は暖かいぞ〜。
    〜4160km



9月2日 水 ちょっと雨  網走女満別キャンプ場〜
 AM9:00,朝飯食わずに出発。何もためらう事は無い、これからどこに行くのか分かっている、何回でも行きたい所へ行こう。知床だ!幌別川だ!
 網走を通ると“毛ガニ タラバガニ”の看板が目に付く。毛ガニか、よし、今夜は毛ガニだ。各店を回って見ると、価格に随分と開きがある。お土産屋系の店はメチャクチャ高く、ガラ声のオヤジにだまされてはいけない。小さな店で“直販・漁師の店・船長の店”などと書いてあると以外に安い。渡辺漁業かに市場で新潟に何件か送り、自分の分も一匹買う。ああ、あこがれの毛ガニ!

 急がず慌てずゆっくりと車を走らせ、PM4:00に知床の幌別川河口に着いた。海は満潮か、前よりも水が多い。海面でピンクサーモンがしきりにハネている。
 『よし、ヤルゾー!』
 ピクシーをキャスト。ゆっくりと巻いて来ると「グッ」重いヒット。横にツッ走り、遥か向こうにラインが伸びる。頭がこっちを向かない。『スレかな?』寄せて見るとやはり背中にルアーが付いていた。
 『ああ、オレとした事が...』
 スレを避けながらリーリング。ピクシーが海面下1m位をヒラヒラと漂っているはずだ。「ククッ」と小さなアタリ。間髪入れず思いっ切り合わせる。
 『ヒットだ!』
 ジャンプ、またジャンプ!シルバーの魚体が宙を切る、ツッ走る、ドラッグが鳴る。
 『スッゲーッ!』
今度はしっかりと口にフックされている。ギンギラに輝いたピンクサーモン60pのオス。ヤッタ!!!
次の一尾は余裕を持ってファイトする。足元に来てから弱めのドラッグを突破して横に走る。まだ釣れていない隣の釣り人のロッドを上げさせるのは気持ちがいい。一時間足らずで3尾釣った。大満足!

 この3尾を、宅急便の看板がある梶原商店という海産物屋に持ち込む。
 『自分で釣った魚を送りたいんですけど、よろしいですかね?』
オヤジさんが親切で、店の流しと粗塩を勝手に使っていいよって言ってくれた。
 流しで魚を洗っていたら、オヤジさんが塩の打ち方を教えてくれた。腹の中、口の中、鰓の中、目にも一つまみ粗塩を押し込み、尾の方から頭に向かって鱗を逆立てる様に塩を打っていく。なるほどね。
 ピンクサーモンは鮭よりも商品価値が低いらしく、このサイズが市場では4〜500円とか言ってた。ルアーよりも安いのか?鮭に負けず劣らずおいしいのにな〜。この下処理した3尾を、高い送料を払ってクール便で新潟に送る。オレも食いたいよ〜。薄塩で焼いたのを炊き立てのご飯と...。

 外は雨が降ってきたけど、今夜は最高に気分がいい。幌別川河口のパーキングに戻って車中泊。車内を片付けて夕食の支度をする。ピンクサーモンは無いけど、今夜は毛ガニがある。狭いレストランで毛ガニで一杯。んんん、ンマイ!北海道に来て一番リッチな夕食だ(でも毛ガニは1000円)。今夜は特にビールもはかどる。いい仕事をした後のビールはウマイぜ!
    〜4289km


9月3日 木 超風!  幌別川河口近くのP〜
 AM9:00,物凄い風と物凄い波で、もうとても釣りどころではない。テントで寝てなくてよかった。飯も食わずにとりあえず内陸部へ移動する。知床峠を越えて羅臼に行ったが、こちら側も風が強い。なにせ、前を走っているバイクが直線でナナメになって走ってる。ナンナンダこの風は!
 標津〜中標津をぬけながら、また考えこむ。『ウーンウーン、今日はどこへ行ってくれよう?』
風の吹くまま気の向くままか、ま、いつもの事だし。
 阿寒湖でウロウロする。まだ陽は高い。温泉にでも入って、のんびりして行こうか。この辺は大ホテルばかりで入りにくい。ひなびた温泉宿がいいな。
 阿寒湖をぬけて、雌阿寒温泉(オンネトー)に行く。入浴料200円。清掃したばかりの木の浴槽からは、澄んだお湯がとうとうと流れ出している。ラッキー、独り占めだ。浴槽の表面には白い温泉成分が付着していて、撫でるとふわふわと剥がれ落ちる。本日の一番湯だ。
熱い!ムチャクチャ熱い!足だけ入れてみたが、熱い硫黄分がビリビリと突き刺さってくる。とても肩までなんて入れたもんじゃない。江戸っ子じいさんならば平気で入るんだろうな、、息を止めてチャレンジ。
 『あ゛〜う゛〜お゛〜っ!』

 足寄で今夜は泊まろうか、などとR241を下りながら考える。途中でバイクがトラブっている2人と出会う。VTZ250のエンジンがかからない様だ。走ってる最中にエンストしてセルも回らない?電気系か?工具を出して見てやると、レギュレーターが火を吹いてパンクしている。
 『こりゃダメだ...』
 仙台からのツーリングの2人を車に乗せて、とりあえず電話を探す。足寄のバイク屋に電話するが、パーツを取るための同型のバイクが無い。取り寄せになってしまう。ザンネンだが、ここで足止めの様だ。今日はこの2人と一緒に、ラワンドライブインの二階のライダーハウスに泊まる事にする(無料)。ここのオバチャンがとても親切な人で、わざわざドライブインを開けて夕食を作ってくれた(有料)。たまには畳の上で寝るのもいいかもしれない。
前にヒッチハイクのチャリンコを拾ったのもこの辺だったよな〜?
    〜4640km


9月4日 金 風曇り  ラワンライダーハウス〜
 AM9:00,畳の上で目覚める。天井は高く広く、いつもの様な三角のグリーンではない。彼らは既に起きていた。明るくもなく、暗くもなく、別にこれと言って落ち込む様子も無い彼らは、
 「船には間に合うと思いますから、何とかなりますよ。」
 『ま、こんなトラブルも帰ったら土産話になるものだから。』などと適当に励ましておく。
二人はバイクが直るまでここに籠城。オレは別れを告げて一足先に出発する。
今日も朝から風が吹いている。さて、この風が良い風になるのか悪い風になるのか、とりあえず風の向かう方向に車を走らせる。糠平か。

 前回は素通りした糠平湖。ルアーにしようかフライにしようか、場所を探している間にも、フライにちょうど良い沢があったので迷わず入る。 水アカも付いてないほどのクリアーで冷たい流れ。ヤマメっ子がポツポツと出て来る。小さなプールでヤマメをからかっていると、40cm位のアメマスがいきなり足元にぶつかって来た。『何やってんだオマエは。』このサイズが釣れる事を期待して、大きめのテレストリアルで流れを攻めるがヒット無し。
雨がパラパラ降って来たので、川から上がってどこかに移動する。今日はトムラウシに行こう。

 峠を越えて然別湖をぬけ、町に下りて食料を買う。玉子が目に付いたので玉子を買い、イカ刺しがうまそうだったのでイカ刺しも買う。ビールもしこたま買い込み、目指すは十勝川上流のトムラウシ温泉。あのド山の中へまた行きたい。
ここも雨が降った後らしく、草木は濡れて道もしっとりとしている。土煙が立たない位でちょうど良い。バイクの連中が山道をカッ飛んで行った。見覚えの有る様なライムグリーンが居る。ま、よく居るカワサキだ。
 PM5:00,キャンプ場に行く前に東大雪荘へ温泉に入りに行くと、駐車場の芝生にバイクの連中がテントを張ろうとしていた。オイオイいいのかよ、こんな所でキャンプして。オレも便乗しようと思ってバイクの横に車を停めると、先程のライムグリーンと目が合った。

 『あ゛っっ!オマエさんは!』互いに指をさす。
 知床で一緒に釣りをして、一緒にピンクサーモンを食べてキャンプしたカワサキバイカーは、10日振りに偶然こんな所で出会った挨拶に「アニサキスは何ともなかったですか?」何て事を言って来た。するどい突っ込みだが、コイツも腹痛でも起こしたに違いない。
 『お互い無事で何よりだ(?)。テントを張ったら温泉に行ってから、また一緒にメシでも食おうや。オレのおごりだ、何食ってもいいぞ!なにせ、アニサキスを分け合った仲だからな。』
 温泉から帰って来て、寒く湿った中で豪華なディナーが始まる。今夜は生玉子ご飯とイカ刺しとモヤシ妙め(豪華だ!)。ビールでは体が冷えるので、彼は秘蔵のウイスキーを出して来てくれた。気が利くぢゃないか。
テーブルのランタンの灯りに、他のバイカーも数人集まって来た。みんなが学生でもなく無職らしい。
体も温まり、皆がそれぞれ旅の苦労話や自慢話で盛り上がり、小雨のパラつく中でトムラウシの夜は静かに過ぎて行く。
    〜4847km


9月5日 土 雨  トムラウシキャンプ場〜
 冷たい雨が音も無く降っていて、バイカー達もさえない様子。でもそんなに暗い空でもないので、まだいいか。
リアハッチの下で、コーヒーと玉子丼。徐々に温まってきた。
自称不動産屋の息子のカワサキバイカーは、林道エンデューロに出ながら北海道を廻っているらしい。これから地図の林道を抜けて下界に降りるそうだ。
 『また、どこかで会えるかな。気を付けて行けよ。』

 一人、また一人と出発して行くのを見送っていると、さっきから3人掛かりで必死にキックしているカブ50が居たので、『通りすがりのバイク屋で〜す。』と言って見てやる。いよいよならば積んでやるけど、カブってるんだろうな。ライトはオフに、チョークは戻して、アクセル全開で、キック一発『ソーレッ!』 あらら、掛かっちゃった。どういたしまして。気分いいナ〜。AM11:30,オレも見送られて出発。

 支笏湖に向かう。ここでも雨が降っていてチト憂鬱。トイレに行きたくなり、恵庭のパチンコ屋に寄って気分晴らしに始める事、時間も忘れて数時間、勘を取り戻して6000円ほど勝ってしまった。まだまだ、鈍ってナイ。

 静まり返った山道を走り、えにわ湖をぬけて支笏湖のポロピナイ(幌美内)キャンプ場にPM9:00に着く。
雨は止んでるが、冷たく寒く、湖のザワメキが空きっ腹に染みて来る。ラムをあおってから、遅い夕飯の支度。温かいご飯に、オカズは何にしようか?何でもいいヤ。
    〜5143km



9月6日 日 晴れ  ポロピナイキャンプ場〜
 AM6:20,管理人に起こされ、250円の徴収。ネムイ。また寝る。

 9:00,ここは湖面に面した広いキャンプ場。芝生はあまり無く、平らな所も少ないがロケーションはGood!湖がキラキラと輝き、とてもキレイ。ジェットスキーがたくさん居る。今日は日曜日か。
朝食は昨日よりも美味しい玉子ドンブリ。コーヒーとビールでくつろぐ。12:00移動。

 支笏湖を眺めつつ、美笛川の流れ込みに入る。風が強いな。このジンクリアーな湖の中に、スーパーブラウンが居るんだ。釣れる釣れないに関わらず、そんな夢を抱いてルアーをキャストする。
いよいよ寒い。これが9月の風か?水温も低く、地元の釣り人がネオプレーンを履いているのも解かる。

 PM6:30,美笛キャンプ場に移動、ガラアキ。前はもの凄く混んでたのに。
今日もまた、ゆっくりとした時間を過ごす事が出来た。ご飯を炊いてSPカレー。

*北海道に来た時にはTシャツ一枚だった。
 で、いま着てるのは、ウールのシャツにトレーナーにマウンテンパーカー。
 9月になってから急に寒くなってきた。今夜からシェラフはタフバック#3にする(今までは#4)。
 蚊が居なくなったし、息が白い。


   ***番外!車に入ってる食料***
@米(途中で“あきたこまち”10kg買う。“こしひかり”にはとてもカナワン)
@カップメン・インスタントラーメン(重宝してます)
@玉ネギ(野菜はコレだけ。日持ちがイイ)
@サラミ(ツマミから、汁の実にもなるスグレモノ。十勝カルパスがウマイ)
@ダシ入り味噌・ダシ入り醤油(いよいよなら、炊きたてご飯とコレと)
@インスタント豚汁(いよいよなら、  〃  )
@のり(乾&佃煮)
@ラード(雪印チューブ。使い易く、コクもあってGood)
@レトルトカレー(100円めいらく辛口)
@梅ぼし
@他、コンソメ・コショウ・バジル・パセリ・アジシオ・タバスコ・七味トウガラシ・
  スライス乾ニンニク・ラー油・オイスターソース・etc
@レギュラーコーヒー(ピュアモカがいいけど、モカブレンドでガマン)
@ビール(北海道で飲むと、格別にウマイ)
@ラム(サントリーのゴールド。安くてもイケル)
@水(10Lジャグを2)

**炊飯**  毎日やってると、これまた楽しい。
・・・米をとぎ、2〜3割増しの水を入れ、30分はそのままで。
・・・弱火にかけて、沸騰したら少し強く、20分。
・・・遠慮なく蓋を開けて様子を見るベシ。
・・・ハシでつつき、水気が飛んで、やや底に付いてる位がベター。
・・・火を止めて蒸らし。良く掻き混ぜてまた蒸らし。
・・・わ〜お、銀シャリの出来上がり!
ストーブの上にセラミックウールを敷くと、コゲにくくて、さらにヨロシイ。



9月7日 月 くもり  美笛キャンプ場〜
 今朝の第一声、『寒い!』
ご飯・のり佃煮・カップメンで朝食。支笏湖は満喫したし、さて、今日はどこに行こうかな?

 AM11:30移動。一山越えて洞爺湖方面へ。大滝村の長流川でフライを振る。川岸は温泉地。真っ昼間の露天風呂に女の子が入って居ないかと思いつつ、息を潜めて川の中を釣り上がる。小物は居るけどフライをくわえきれない。ヤマメかニジマスか?露天風呂横のプールの流れ出しにロングキャスト。黒い物がス〜っと浮いてきて、「パクン」てな感じでヒット! プールを暴れた挙句に取り込むと、まぁまぁの型のニジマス。イイ環境に棲んでやがる。フックを外して、そっとリリース。PM2:00移動。

 洞爺湖をグルっと一周。ここも透明度が高くてキレイな湖。釣りはせずに景色だけでも楽しむ。

 4:00,留産あたりか、尻別川でルアー。大石がゴロゴロしてる川底からニジマスがアタック!型は小さいけど、見事なまでのグリーンの体高のある背中。将来が有望だ、大きくなれよ。

 6:00,真狩村の羊蹄山自然公園キャンプ場へ。ここは電話が全く無い。下の村まで電話をかけに行く。ついでにスーパー雑貨屋で冷凍の肉も。アイスクリームの横に冷凍イカと一緒にオチャメに詰まれている。
今夜は焼肉でビール。ンマイ、さむい。その後ご飯が炊けたのを見計らい、ピーマンと玉ネギを加えて炒め、味噌ダレで味付けして中華丼にする。

 *炊事場で話しをした人が、栃尾の人だった。
   ヒゲのサイクリストさんと、ビールで乾杯!明日もたくさん漕ぐって。
    〜5343km


9月8日 火  曇り&風  羊蹄山自然公園キャンプ場〜
 風が吹いてイヤな天気。コーヒー・チャーハン・トン汁で朝食。
管理棟に料金を払いに行く。200円ナリ。
こんなキャンプ場に駐在員が4〜5人も居る。実はここが真狩村役場か?

 AM10:30,京極町のペーペナイ川でルアー。前にアメマスをバラしたポイントだ。
2〜3投目で50オーバーのニジマス?が追ってきた。『 ッ!』 何回もルアーを取替え、その度に姿を見せるが食わない!2時間ほどネバったが××××!ザンネン、ムネン。

 ニセコ中をブラブラし、PM5:00,雲の中の五色温泉キャンプ場へ。 ホントここは雲の中。何が五色かサッパリ解からん。バイクの人が2人居るだけ。山の下から纏わり付く様な雲が流れて来る。
テントを張ってから目の前の温泉に行く。500円ナリ。石鹸・シャンプー・リンス・ドライアー完備。サッスガ!

 ここは周りに木が無いので、雲で重くなった風がまともに当たる。しかたないので、オプショナルフライの中でご飯のしたく。すると、お客さんが通りかかった。キタキツネのアベック?『コンばんは。』

  PS:キツネの鳴き声を初めて聞いた。「KON」って言うよりも「CON」って感じかな〜。
    厚い雲の中で、自慢?の毛皮はベタっとしてるし、ヌイグルミよりもぜんぜんカワイクナイ。
    どちらかと言うと、ピノキオをたぶらかす、悪ギツネみたいな顔をしてる。
    あ、「CORN」かもしれない。


   ***番外! キ・タ・キ・ツ・ネ!***
 9月8日の五色温泉キャンプ場での事。
 この夜の11:00頃、何やら「ガサゴソ・・・」って音で目が覚める。『しまった!ゴミ袋をヤラレタ。』と思った。
シェラフから静かに起きて、テントのファスナーを静かに開く。オプショナルフライ(テントの外の前室・荷物置き場)の中に置いてあるはずのゴミ袋が無い。「ガラガラ、ガサゴソ・・・」まだ外で音がする。
 『あぁ、ナンテコッタ...』
 その内に音が止み、すぐにオプショナルフライと地面の隙間からキツネが頭を突っ込んで来た。
!!!目と目が合った。ヤロゥ、気マズそうな顔して後ずさりして引っ込んだ。
 『アイツか!』

 すかさずオレもカメラを持って外に出る。まだテントの周りをウロウロしている。小枝などを持ってエサをやる真似をすると、鼻先を摘まめる程に近くに寄って来る。「カシャッ!」あまりフラッシュに驚かない。期待ハズレ。
 その内にエサをもらえないとわかると、テントの周りをウロツキ始めた。何をするのか見ていたら、フライシートを張るショックコードにカジリついた。『そんな物は食えないゾ!』と言いつつカメラを覗き込む。
 「カジカジカジ、パッツン」と、ショックコードが切れた!
 『OH!MY GOD! ナニすんだコノヤロー!』 
逃げて行ったと思ったら、反対側でも「カジカジカジ、パッツン」 フライシートがダラリん。あっと言う間の出来事だった。どう考えても、知っててやってるとしか思えない。

 外は濃い雲の中。何とかキツネを追い払ったが、コン度は2匹になり3匹になり、見える範囲でウロウロしてる。でも、しばらくすると3匹とも居なくなった。このスキに散らかったゴミを拾い集める。そして、テントの中の食料も一緒に車の中に入れる。『これでヨシと。』 振り返り、テントの方を見ると2匹がウロウロしていた。急いでテントに駆け寄ると、中から1匹飛び出して来た。『コイツラは...』 ふと見ると、1匹が車の中をノゾキ込んで居る。まったく油断出来ない。

 髪の毛まで雲で濡れて寒くなって来たので、テントの中に入る。すっかり目が覚めてしまった。ラムを飲みながらシェラフにもぐり込む。しばらくすると、また「ガサガサ・・・」と、テントに入ろうとしてる音がする。オレは『バンバンバン!』と、テントの内側から追い払う。し〜ん・・・「ガサガサ・・・」『バンバンバン!』 し〜ん・・・「ガサガサ・・・」『バンバンバン!』 こんな事を1:00近くまで繰り返していた。

 朝になり、炊事場に行ってバイクの人に夜の事を話すと、この人もゴミ袋をヤラレ、真夜中にキツネと争った挙句に、朝起きたら靴の片方を持って行かれたそうな。幸いな事に近くにあったらしいが。
マッタクもって、イタズラが過ぎる。カワイクナイ! もう写真なんて写してあげない。ク・ソ・ギ・ツ・ネ!



9月9日 水 まだ雲の中  五色温泉キャンプ場〜
 昨夜はキツネにサンザンな目に遭わされた。
AM8:00,ご飯・トン汁・のり・コーヒー。キャンプ場内のゴミ拾いをしてから11:30移動。

 また、ペーペナイ川に来てしまった。昨日よりも水位が少し多い。
1時間程ネバるが、まったく、やっぱり、さっぱりダメ。あきらめて移動....

 オシャマンベを抜けてピリカに行く。カニカン岳の川に。ここも水量が多く、以前にウェーディングした場所が渡れない。夏も冷たかった川は、9月の気温も手助けしていて更に冷たい。フライでヤマメが何匹か出ただけで、これと言ってドラマチックの出会いはなかった。ドライではつらいかも?

 ピリカキャンプ場はオレ一人みたい。テント張ってから温泉に行く。相変わらずアツイ湯だ。
炊きたてご飯とSPカップメンとビール。
思い出の多いピリカ、もう旅も終わりか、終わりなのか?
    〜5598km


9月10日 木 雨  ピリカキャンプ場〜
  8:00,雨、本を読む。
 12:00,雨、チャーハンを作って食べる。
  2:00,移動、雨。
  3:00,ユーラップ川、雨。濁っている。
      それでもルアーを投げる。ズブ濡れになりながらも、何回も何回も投げる...。
         『ありがとう...』

 PM5:30,函館フェリーに着く。6:30の大間行きがある。でも、あと1日だけ北海道に居ようか。

 亀田半島に移動するが、地図に書いてある恵山岬のキャンプ場が無い!探しまくるが無い!!
仕方なく川汲のキャンプ場まで行く。やっと着いたのに公園内のキャンプ場なので車を入れられない。まだ雨が降ってるし。

 結局、函館まで戻ってから大野町のキャンプ場に行く。11:00着。
ここ(北海道)に来て最初に泊まったキャンプ場だ。
雨も上がってキレイに星まで見える。北海道最後の夜。

 明日はいい天気になるかな? そろそろご飯も炊けてきた。
    〜5913km



9月11日 金 風(台風?)  大野町のキャンプ場〜
 AM7:00,テントが揺れて目が覚めると、モノスゴイ風。意外にもこのムーンライトVは強い。本読みながらゴロゴロしてる。
 10:00には風が弱まったので、コーヒー沸かして朝食の支度。
温めたご飯とホットワンタン、特別メニューとして十勝牛の骨付きカルビを買って来た。一枚づつ塩コショウで丁寧に焼き、焼けた順から味わうと、外パリ中レアで香り高く柔らかくジューシーでほのかな甘味も有り、こんなにも美味しいのは初めてだ。もう少しとどまろうか?

 キャンプ場のゴミ拾いをしながら高台に行くと、眼下に函館から恵山岬まで一望出来た。ここからの夜景を見損ねてしまった。真っ暗な大地にポンと置いた様な函館の色とりどりの灯かりの塊りと、遥か水平線に点在するイカ釣り船の光が見えて居たに違いない。
11:30,風が止んだ。キツネが戯れて居る。そろそろ出かけるか...。

 残念ながらフェリーのチケットはすぐに買えた。幾らも待たずにフェリーに乗り込む。大地とフェリーをつなぐスロープをゆっくりと登り始めると、胸から目に向かって一筋の何かが走り抜けた。ブレーキを踏みそうになるのをグッと堪え、フェリーの四角い入り口まで長い時間が流れて行った。

 PM1:50,出船。  遠ざかる港を、北海道を、ずっと見て居た。
  『ありがとう...。』


 2:30,大間着。船を降りると、目の前に、20〜30km先に北海道が見える。
車で30分位か。でも、その前には海が。
R338を走る。ヒドイ道だ。山の中の川でフライを振るが、全くもって音沙汰無し。    〜R279

 道路が狭い。センターラインが黄色い。バイカーもチャリンカーも居ない。牧場が無い。原生林が無い。笹が無い。フキの葉が小さい。杉の木が植えてある。家がたくさん有る。キタキツネが見当たらない。
もう、世界が変わったって感じ。

 10:00,やっと十和田湖の生出キャンプ場に着いた。
野辺地で買ったホタテを焼いてツマミつつ、ご飯とラーメンで遅い夕食。
ビール飲みながら考える。明日はどうしようか?
    〜6201km


9月12日 土 雨のち晴れ  十和田湖 生出キャンプ場
 朝は雨の音で目を覚ます。このキャンプ場に居るのは、オレと他に2組だけ。8月に通った時には、ムチャクチャに混んでたのに。
適当に朝食を済ませ、管理棟に料金を払いに行く。コインランドリーとシャワー室が有った。キャンプ料金は200円。キレイに整地もされていて、とても良いキャンプ場だ。(人が少なければの話し)

 洗濯物を持って来て、コインランドリーが終わるまでの間管理人さんと話しをして居たけど、この人がチャキチャキの青森弁(津軽弁?)なので、いったい何を言ってるのかサッパリ解からず、どうにか相づちだけは打ったがイヤな顔もしてなかったし、タイミングは上々。
居心地が良さそうなので、今日もここに居る事にする。

 散歩がてらにルアーで湖に釣りに行く。ここの水もとてもキレイ。小魚がたくさん居るのが見える。本気にならない程度に楽しんで(釣れない)から湖岸を散策。

 夕方の早い時間にキャンプ場へ帰ると、ファミリーキャンパーで一杯になっていた。週末のお楽しみを楽しんでいる様だ。
ビール飲みながら本を読んで居ると、近くに外人のキャンパーが居る様だ。地元青森弁とは区別が付くが、どちらもアチラ語なので、やはり何を言ってるのかサッパリ解からない。
ご飯を炊いてる最中に、テントの近くで子供の泣き声がする。
  「Mammy、Mammy、Mam-my―!」  「ママはこっちよ、いらっしゃい」  奥さんは日本人か?

 ご飯を蒸らしている間に、フライパンで玉ネギの微塵切りとコンビーフを炒め、ブラックペッパー・バジル・パセリ・ガーリックを入れて更に炒める。そこへ100円レトルトカレーを入れて煮込む。仕上げにレトルトハンバーグをタレごと入れて少し煮込むと、SPハンバーグカレーの出来上がり。
周りからは、焼肉とカレーの香りが漂っているが、ここのカレーもイイ線いってるゾ。


9月13日 日 晴れ  十和田湖 生出キャンプ場〜
 今日も朝から何語だか解からないけど、多国籍の会話が聞こえる。まるで暗号なので解読不能。
車の中から必殺ホンコンヤキソバを見つけた。よしよし、決まり。愛用のナイフのオピネルNo6は、いつの間にか黒っぽく変色しているが、砥ぎをかけているので切れ味はバツグン。この切れ味を生かして、左手に持った玉ネギを薄く細かくスライスして、同様のサラミの薄切りと生味噌トン汁の素が入ったシェラカップに落としていく。スベアで沸かしたてのお湯を注ぎ込むと、毎日のサラミトン汁の出来上がり。七味を振って 『いただきま〜す。』
冷めたコーヒー飲んで、読みかけの本を広げて、ゆっくりして居る。

 12:30,重い腰を上げる。
 2:00,二ツ井町のスタンドで給油。
 7:00,酒田のスタンドで給油。

 道が狭い。車が多い。人口建造物ばかりがケジメ無く続いている。変に暑い。キツネが居ない...。

 10:30,荒川河口まで来た。今夜は満月か?月明かりの下に、エサ師の電気ウキが所狭しに浮いている。
スズキ狙いみたいだ。せっかくだから、オレもルアーをセットして河口に入る。
通りがかりのエサ師が「今夜はダメだ。」と、ぼやいている。
1時間位振り続け、諦めて車へ。カップメンすすってから車中泊。疲れた...
    〜6639km


9月14日 月 晴れ  荒川河口〜
 AM7:30,外はとてもイイ天気。暑い!
8:30,移動。走る、走る。

 10:00,見慣れた新潟市で、行く当て無にブラブラする。 
お昼になって“おもだかや”で『ちゃーしゅーワンタン麺の大盛り!』 生き返る。
徐々に体を馴染ませなければ。

 R8で帰るが、あまりに車と信号が多くてイヤになり、途中から高速道路に乗る。


 〜小出着。真っ先にAベンチに行き、
 『只今、帰りました!』
 「今まで行ってたの?」

 PM6:00,銀山湖へ。 「何んしぃ来た」と、石抱のオヤジ。
キャンプ場に行くと、ナント、一人1500円!オレがバイトしてた時には、日帰り100円、キャンプ300円だったと思ったが?村の経営方針が替わったのか。

 キャンプ場をやめて、トンネル脇の空き地でキャンプ。ここは国定公園なので、キャンプ場以外でのキャンプは禁止。でも、山が「いいよ」って言ってくれたので、ここにテントを張る。
秋風が吹いているが、北海道に比べれば、まるで南国の様だ。家を出てから33日目の最後の夜...
    〜6835km


9月15日 火 晴れ  銀山平トンネル脇の空き地
 夜中に少し雨が降っていたけど今はカラリと晴れ上がり、とても清々しくてイイ天気。
 コーヒー沸かしながら、シェラフを乾す。
 小ナベで、1人前のご飯を炊く。
 うまく炊けた。
 味噌汁は、いつものサラミ入りトン汁。 おいしい...。

   テントを片付け、車の中も片付ける。
   このコーヒーを飲み干したら、、、そろそろ帰ろうか。


   何か、一つの時代が終わった様な気がする。
   長編小説を一気に読み終えた様な...。
   全身全てを洗脳され、改造されてしまった。
   もしくは、自我をその本の“しおり”にしてしまったのかもしれない。
     オレはどこへ行くんだろう

   すべては、これからの人生の前書きだったのかも知れない

                           1992年 9月15日 銀山平にて





  Let’s北海道92” 完
ここまで読んでくれて、ありがとう ございました。  野良屋           TOP     BACK